恋がしたい、2021

1年以上ぶりに就労を再開した。

 
転職先の仕事は、自分でなくとも誰でもできる、なんなら、この世からこの仕事がなくなったとしても、困る人間は1人もいない。波も風も立てない。労働のために作られた仕事をしている。仕事のために作られた労働をしている。

 
世界は労働によって保たれているという幻想を維持するため、誰もが労働をすることで世界に参画しているという既成事実を作るため。突き詰めれば、この世の仕事はそのほとんどが、労働を提供するために、無理矢理作り出されている。

 

自分の仕事は、「仕事から属人性をなくす」ことが仕事である。ようするに、仕事を誰でもできるよう整備していくのが仕事なのだけれど、始まった段階で、誰でもできるのだが、会社でそれに気づいているのは自分以外ひとりもいないようだ。怖すぎる。

 

全員が、自分が必要だと信じて疑わない、狂信者の祭りのなかに放り出されてしまった、羊よりもか弱い、このおれが。

 

仕事から属人性が排除された暁には、おれの仕事がなくなるのでクビ、としか今の段階だと思えないのだが、ともあれ、自分の仕事を奪うため日々働いている。そもそも、クビになる前に、また鬱が悪化して働けなくなる予感もしている。


なんにせよ、働けなくなるその日まで、無を無から無に移す、そんな仕事を続ける。終わりも始まりも見失った、迷路のような世界に閉じ込められながら。結局それだけですよ。他はぜんぶからっぽ。それがこの世、それだけです、マジで。

 

とりあえず今は恋がしたい、それだけです。

 


一切合財世も末だ/友川かずき